アマゾン「キンドル」との複雑な関係
出版業界が巨額の資金を手に出版物100万点の電子化作業に着手する。4月2日、新会社「出版デジタル機構」が発足した。産業革新機構が最大150億円を出資し、電子書籍の普及を後押しする。今年は米アマゾン・ドット・コムの電子書籍サービス「Kindle(キンドル)」がついに上陸するとも噂される。楽天も参入を準備している。今年こそ本当の「電子書籍元年」となるのか。
「電子書籍元年と言われてから2年。端末や電子書籍書店の普及は進んだが、コンテンツの数は大して伸びていないのが実情。それが今回、出版デジタル機構の発足で一気にタイトル数を増やすことができる。やっと電子書籍市場が大きく羽ばたくタイミングにきたと期待しています」
「出版デジタル機構」の設立発表会に出席した、社長に就任する植村八潮・東京電機大出版局長(中央)ら(29日午後)=共同
出版デジタル機構の取締役に就任した講談社の野間省伸社長は、29日の設立説明会の場でこうあいさつした。取締役を出す講談社、集英社、小学館はじめ、角川書店、新潮社、文芸春秋など日本を代表する出版社15社がデジタル機構に20億円を出資。すでに約290の出版社が「参加」を表明している。最終的には政府が9割を出資する官民ファンドの産業革新機構が150億円を出資し、最大株主になる見込みだ。
サービス名は「Pubridge(パブリッジ)」。社長に就任する植村八潮・東京電機大出版局長が「株式会社だが開かれた公的基盤を目指す。すべての書店や出版社を結ぶ『懸け橋』になりたい」と話したように、出版物の電子化作業のほか、電子書店への配信代行や著作権者への収益分配管理といったサービスも担う。
巨額の資金を後ろ盾にした国内出版の大同団結。ただ、これで「ようやく日本でも本格的な電子書籍時代が訪れる」と判を押すのは早計だ。先行きを占う前に、“電子書籍後発国”の現実を認識しておく必要がある。
■先送りされてきた「電子書籍元年」
米アップルのタブレット端末「iPad」が発売された2010年、国内メディアは「電子書籍時代の到来」と色めきだった。大手出版社や書店に加え、デジタルコンテンツの配信で覇権を狙おうとするメーカーや通信会社、印刷会社など大手企業も参集し、電子書籍配信のプラットフォーム(技術基盤)や電子書店が次々と立ち上がった。
しかし12年になっても電子書籍が普及しているとは言い難い。いや、小説やノンフィクションといった「書籍の電子版」が普及していないと言った方が正確だろう。
11年度で約700億円といわれる国内電子書籍市場の約8割は、実はフィーチャーフォン(日本固有の携帯電話)向け。その大半はコミックで、「ボーイズラブ」と呼ばれる女性向けアダルト作品も多く含まれる。電子書籍リーダーやタブレット端末向けの電子書籍配信に限ると、その市場規模は国内の書籍市場全体(約8200億円)の1%にも満たない。
背景には、コンテンツの電子化作業の遅れがある。紀伊國屋書店全店週間和書ベストセラー(3月19日~25日)30位までのタイトルで電子書籍版も販売していたのは、「大往生したけりゃ医療とかかわるな(中村仁一著、幻冬舎)」、「人生がときめく片づけの魔法(近藤麻理恵著、サンマ-ク出版)」など3タイトルのみ。幻冬舎とサンマ-ク出版でも、それぞれ6位と7位の別のタイトルには電子版がなかった。新刊本ですらこんな状況だから、既刊本は推して知るべしだ。
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